ひきつづき、ロルフ・ドベリ著『Think clearly』を紹介します。
16.自分の向き不向きの境界をはっきりさせようー「能力の輪」をつくる
・「能力の輪」を意識しながらキャリアを築く
ウォーレン・バフェットの言葉
人間は、自分の「能力の輪」の内側にあるものはとてもよく理解できる。
だが「輪の外側」にあるものは理解できない。あるいは理解できたとしてもほんの一部だ。
バフェットの人生のモットー
「自分の『能力の輪』を知り、その中にとどまること。輪の大きさはさほど大事じゃない。
大事なのは、輪の境界がどこにあるかをしっかり見極めることだ」。
つまり自分の能力を知りそれを活用せよということでしょう。
自分の『能力の輪』を意識しながらキャリアを築くことは、いい人生を送るためのコツの一つだそうですが、そこに常にピントを合わせておくことでもたらされるのは、金銭的な成果だけではなく、感情的な成果を、あるいはお金では買えない自信を、得ることができるそうです。
「能力の輪」の境界がわかっていれば、そのうえ時間も節約できます。境界が明確なら、できる仕事、間に合う仕事をその都度判断せずに、承諾したり断ることができるのです。
・魅力的な仕事のオファーが舞い込んできたら?
著者は以前、大金持ちから100万ユーロ(約1億2千万円)で伝記を書いてくれないかとのオファーを断ったそうです。
理由は、伝記の執筆が自分の「能力の輪」の範囲外だったからだそうです。
著者は、引き受けていれば、きっと無駄な労力を使って、平凡な本しか書けなかったであろう、と振り返っています。
能力の輪に関して、魅力的な仕事のオファーを受けて自分の能力を「超えたくなる」誘惑のほかに、自分の能力の輪を「広げたくなる」誘惑があるそうです。
しかし著者は、人間の能力は、一つの領域から次の領域へと「転用」がきくわけではないから、やめておいたほうがいい、と言います。
能力には、それぞれ決まった「専門領域」があるそうです。
・ゲイツもジョブスもバフェットも「同じ」だった
それなら「能力の輪」はどうやってつくりあげればいいのでしょうか?
「能力の輪」の形成に必要なのは、「時間」だそうです。それも、とても長い時間だそうです。
もう一つは、「執着」だそうです。
ゲイツやジョブスやバフェットは、それぞれ自分の道に執着あるいは中毒になっていました。
彼らは、それらの執着し何千時間も費やしたからこそ、その分野のエキスパートになれたのです。
・「欠点」よりも「能力」のほうに目を向ける
「能力の輪」という考え方に影響力があり、またそれを知ることが人生の成功につながるのはなぜでしょうか?
答えな簡単だそうです。平均的なプログラマーとすばらしいプログラマーの差を考えてみましょう。
その差は二倍や、三倍や百倍どころではなく、なんと千倍だそうです。
この千倍の開きは、弁護士にも外科医にもデザイナーにも、研究者にも販売委員にも当てはまるそうです。
ほかにも、予想外のことばかりで「人生は計画できないもの」ですが、ただ一か所「能力の輪」の中では、必要なだけ先を見通し、その後に起こる事態を予測することができるそうです。
結論として、「自分に不足している能力」に不満を感じるのはやめましょう。
少なくとも「一つの分野」で抜きんでていればいいのです。
一つでも素晴らしい能力があれば、欠点がいくつあろうと帳消しになるのです。
同じ時間を費やすなら、「能力の輪」の内側のことに費やすほうが千倍の価値があるのです。
17.静かな生活を大事にしよう―冒険好きな人より、退屈な人のほうが成功する
・「証券トレーダーたち」と「バフェット」の対比
証券会社のトレーディングルームで、男性ホルモンをみなぎらせ必死にトレードをしている腕まくりをした証券トレーダーたち。
どこにでもあるオフィスビルの14階にある飾り気のないオフィスでで静かに働く白髪のウォーレンおじさん。
両者の違いが理解できれば、人生に役立つそうです。
・「投資家」だけが大きな成功を手にできる理由
両者の違いはまず、「投機家」と「投資家」という違いになります。
証券トレーダーたちは、活発に有価証券を売買して利益を生み出そうとします。
バフェットたちは、少数の企業の有価証券だけを買って、売買をできるだけ行わず、長く保有します。
両者の最も大きな違いは、「費やす時間の長さ」です。
そもそも、私たちの脳は、「短時間に一気に状況が変わるような展開」を好むようにできているそうです。
何かがピークに達したりどん底に落ち込んだ時、急激な変化や世の中が騒然とするようなニュースには、大げさに反応し、ゆったりした展開にはほとんど気づかないのです。
そのため、私たちは、「何もしない」よりは「している」ほうを、「思案する」よりは「せっせと働く」ほうを、「ただ待つ」よりは「積極的に動く」ことのほうを、高く評価してしまうのだそうです。
・なぜ「カローラ」が最も売れた車となりえたのか
これまで一番売れている本は、(何十年もしくは何百年出版され続けている)聖書や毛沢東の「毛主席語録」、サン=テグジュペリの「星の王子様」などなど、いわゆるロングセラー本だそうです。
カローラは、世界で一番売れている車ですが、発売一年目の売り上げで人気車になったわけでなく、長期にわたって売れ続けているからこそ、人気車の座を獲得できたのです。
こうした長期にわたる成功のもう一つの例として、利回り5パーセントの商品を挙げることができます。
この商品に120万円を投資したとしたら、一年目の利益は6万円と大きな額ではないですが、10年後には、120万円は200万円になり、50年後には1400万円になります。
これが、「長い時間をかけて一貫して何かに取り組んだほうが、大きな成功が得られる」という理由です。
資本は、一定の割合ではなく、飛躍的に増えるのです。
しかし我々は、長期にわたって起こる飛躍的な変化を感じとることができないのです。
緩慢で退屈そうに見えて、時間がかかるプロセスが最も大きな成果を生み出しますが、同じことは人生にも言えます。
・一つのことに「長期的」に取り組もう
現在、「積極性」や「多忙さ」や「せわしなさ」が、かつてないほど褒めはやされているそうで、人生まで完全に破壊して、新たに創りあげるようせきたてられているかのようです。
そのうえ多くの人は、人生には、冒険や旅行や、さらには絶頂期がつきものだと思い込んでいます。
しかし著者は、人生は、静かなほうが生産性が高い、と言います。
バート・ラッセルが次のように書いているそうです。
「ほんの少しの華々しい時期を除けば、偉人たちの人生はとても刺激的と言えるようなものではない」
ソクラテスも、カントも、ダーウィンも、えてして静かな生活を送っているもので、大した楽しみもない人生のように見えたかもしれないそうです。
派手に動き回れば、積極的に動き回れば、結果がともなう、という相関は存在しないそうです。
だから人生を向上させるためには、
せわしなく動き回るのを控え、何ごとにも落ち着いて、長期的に取り組むことが大事です。
いったん「能力の輪」をつくりあげたら、また同様によい人生のパートナーや理想的な住まいや充実感を得られる趣味を見つけた場合も、根気、長期的な考え、一つのことに取り組み続けることが、非常に価値のあることだそうです。
それらは今、過小評価されている美徳なのです。
つづく…。
16.自分の向き不向きの境界をはっきりさせようー「能力の輪」をつくる
・「能力の輪」を意識しながらキャリアを築く
ウォーレン・バフェットの言葉
人間は、自分の「能力の輪」の内側にあるものはとてもよく理解できる。
だが「輪の外側」にあるものは理解できない。あるいは理解できたとしてもほんの一部だ。
バフェットの人生のモットー
「自分の『能力の輪』を知り、その中にとどまること。輪の大きさはさほど大事じゃない。
大事なのは、輪の境界がどこにあるかをしっかり見極めることだ」。
つまり自分の能力を知りそれを活用せよということでしょう。
自分の『能力の輪』を意識しながらキャリアを築くことは、いい人生を送るためのコツの一つだそうですが、そこに常にピントを合わせておくことでもたらされるのは、金銭的な成果だけではなく、感情的な成果を、あるいはお金では買えない自信を、得ることができるそうです。
「能力の輪」の境界がわかっていれば、そのうえ時間も節約できます。境界が明確なら、できる仕事、間に合う仕事をその都度判断せずに、承諾したり断ることができるのです。
・魅力的な仕事のオファーが舞い込んできたら?
著者は以前、大金持ちから100万ユーロ(約1億2千万円)で伝記を書いてくれないかとのオファーを断ったそうです。
理由は、伝記の執筆が自分の「能力の輪」の範囲外だったからだそうです。
著者は、引き受けていれば、きっと無駄な労力を使って、平凡な本しか書けなかったであろう、と振り返っています。
能力の輪に関して、魅力的な仕事のオファーを受けて自分の能力を「超えたくなる」誘惑のほかに、自分の能力の輪を「広げたくなる」誘惑があるそうです。
しかし著者は、人間の能力は、一つの領域から次の領域へと「転用」がきくわけではないから、やめておいたほうがいい、と言います。
能力には、それぞれ決まった「専門領域」があるそうです。
・ゲイツもジョブスもバフェットも「同じ」だった
それなら「能力の輪」はどうやってつくりあげればいいのでしょうか?
「能力の輪」の形成に必要なのは、「時間」だそうです。それも、とても長い時間だそうです。
もう一つは、「執着」だそうです。
ゲイツやジョブスやバフェットは、それぞれ自分の道に執着あるいは中毒になっていました。
彼らは、それらの執着し何千時間も費やしたからこそ、その分野のエキスパートになれたのです。
・「欠点」よりも「能力」のほうに目を向ける
「能力の輪」という考え方に影響力があり、またそれを知ることが人生の成功につながるのはなぜでしょうか?
答えな簡単だそうです。平均的なプログラマーとすばらしいプログラマーの差を考えてみましょう。
その差は二倍や、三倍や百倍どころではなく、なんと千倍だそうです。
この千倍の開きは、弁護士にも外科医にもデザイナーにも、研究者にも販売委員にも当てはまるそうです。
ほかにも、予想外のことばかりで「人生は計画できないもの」ですが、ただ一か所「能力の輪」の中では、必要なだけ先を見通し、その後に起こる事態を予測することができるそうです。
結論として、「自分に不足している能力」に不満を感じるのはやめましょう。
少なくとも「一つの分野」で抜きんでていればいいのです。
一つでも素晴らしい能力があれば、欠点がいくつあろうと帳消しになるのです。
同じ時間を費やすなら、「能力の輪」の内側のことに費やすほうが千倍の価値があるのです。
17.静かな生活を大事にしよう―冒険好きな人より、退屈な人のほうが成功する
・「証券トレーダーたち」と「バフェット」の対比
証券会社のトレーディングルームで、男性ホルモンをみなぎらせ必死にトレードをしている腕まくりをした証券トレーダーたち。
どこにでもあるオフィスビルの14階にある飾り気のないオフィスでで静かに働く白髪のウォーレンおじさん。
両者の違いが理解できれば、人生に役立つそうです。
・「投資家」だけが大きな成功を手にできる理由
両者の違いはまず、「投機家」と「投資家」という違いになります。
証券トレーダーたちは、活発に有価証券を売買して利益を生み出そうとします。
バフェットたちは、少数の企業の有価証券だけを買って、売買をできるだけ行わず、長く保有します。
両者の最も大きな違いは、「費やす時間の長さ」です。
そもそも、私たちの脳は、「短時間に一気に状況が変わるような展開」を好むようにできているそうです。
何かがピークに達したりどん底に落ち込んだ時、急激な変化や世の中が騒然とするようなニュースには、大げさに反応し、ゆったりした展開にはほとんど気づかないのです。
そのため、私たちは、「何もしない」よりは「している」ほうを、「思案する」よりは「せっせと働く」ほうを、「ただ待つ」よりは「積極的に動く」ことのほうを、高く評価してしまうのだそうです。
・なぜ「カローラ」が最も売れた車となりえたのか
これまで一番売れている本は、(何十年もしくは何百年出版され続けている)聖書や毛沢東の「毛主席語録」、サン=テグジュペリの「星の王子様」などなど、いわゆるロングセラー本だそうです。
カローラは、世界で一番売れている車ですが、発売一年目の売り上げで人気車になったわけでなく、長期にわたって売れ続けているからこそ、人気車の座を獲得できたのです。
こうした長期にわたる成功のもう一つの例として、利回り5パーセントの商品を挙げることができます。
この商品に120万円を投資したとしたら、一年目の利益は6万円と大きな額ではないですが、10年後には、120万円は200万円になり、50年後には1400万円になります。
これが、「長い時間をかけて一貫して何かに取り組んだほうが、大きな成功が得られる」という理由です。
資本は、一定の割合ではなく、飛躍的に増えるのです。
しかし我々は、長期にわたって起こる飛躍的な変化を感じとることができないのです。
緩慢で退屈そうに見えて、時間がかかるプロセスが最も大きな成果を生み出しますが、同じことは人生にも言えます。
・一つのことに「長期的」に取り組もう
現在、「積極性」や「多忙さ」や「せわしなさ」が、かつてないほど褒めはやされているそうで、人生まで完全に破壊して、新たに創りあげるようせきたてられているかのようです。
そのうえ多くの人は、人生には、冒険や旅行や、さらには絶頂期がつきものだと思い込んでいます。
しかし著者は、人生は、静かなほうが生産性が高い、と言います。
バート・ラッセルが次のように書いているそうです。
「ほんの少しの華々しい時期を除けば、偉人たちの人生はとても刺激的と言えるようなものではない」
ソクラテスも、カントも、ダーウィンも、えてして静かな生活を送っているもので、大した楽しみもない人生のように見えたかもしれないそうです。
派手に動き回れば、積極的に動き回れば、結果がともなう、という相関は存在しないそうです。
だから人生を向上させるためには、
せわしなく動き回るのを控え、何ごとにも落ち着いて、長期的に取り組むことが大事です。
いったん「能力の輪」をつくりあげたら、また同様によい人生のパートナーや理想的な住まいや充実感を得られる趣味を見つけた場合も、根気、長期的な考え、一つのことに取り組み続けることが、非常に価値のあることだそうです。
それらは今、過小評価されている美徳なのです。
つづく…。