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このブログは、少し賢くなりたい賢く生きたい、という希望を持って始めるブログです。 賢く生きる方法を探究するために、関連する書物や記事を読んでまとめていきます。

2020年06月

Think clearly:⑯⑰

ひきつづき、ロルフ・ドベリ著『Think clearly』を紹介します。

16.自分の向き不向きの境界をはっきりさせようー「能力の輪」をつくる

・「能力の輪」を意識しながらキャリアを築く
ウォーレン・バフェットの言葉
人間は、自分の「能力の輪」の内側にあるものはとてもよく理解できる。
だが「輪の外側」にあるものは理解できない。あるいは理解できたとしてもほんの一部だ。

バフェットの人生のモットー
自分の『能力の輪』を知り、その中にとどまること。輪の大きさはさほど大事じゃない。
大事なのは、輪の境界がどこにあるかをしっかり見極めることだ
」。

つまり自分の能力を知りそれを活用せよということでしょう。

自分の『能力の輪』を意識しながらキャリアを築くことは、いい人生を送るためのコツの一つだそうですが、そこに常にピントを合わせておくことでもたらされるのは、金銭的な成果だけではなく、感情的な成果を、あるいはお金では買えない自信を、得ることができるそうです。

「能力の輪」の境界がわかっていれば、そのうえ時間も節約できます。境界が明確なら、できる仕事、間に合う仕事をその都度判断せずに、承諾したり断ることができるのです。


・魅力的な仕事のオファーが舞い込んできたら?
著者は以前、大金持ちから100万ユーロ(約1億2千万円)で伝記を書いてくれないかとのオファーを断ったそうです。
理由は、伝記の執筆が自分の「能力の輪」の範囲外だったからだそうです。
著者は、引き受けていれば、きっと無駄な労力を使って、平凡な本しか書けなかったであろう、と振り返っています。

能力の輪に関して、魅力的な仕事のオファーを受けて自分の能力を「超えたくなる」誘惑のほかに、自分の能力の輪を「広げたくなる」誘惑があるそうです。
しかし著者は、人間の能力は、一つの領域から次の領域へと「転用」がきくわけではないから、やめておいたほうがいい、と言います。

能力には、それぞれ決まった「専門領域」があるそうです。


・ゲイツもジョブスもバフェットも「同じ」だった

それなら「能力の輪」はどうやってつくりあげればいいのでしょうか?

「能力の輪」の形成に必要なのは、「時間」だそうです。それも、とても長い時間だそうです。
もう一つは、「執着」だそうです。
ゲイツやジョブスやバフェットは、それぞれ自分の道に執着あるいは中毒になっていました。

彼らは、それらの執着し何千時間も費やしたからこそ、その分野のエキスパートになれたのです。


・「欠点」よりも「能力」のほうに目を向ける

「能力の輪」という考え方に影響力があり、またそれを知ることが人生の成功につながるのはなぜでしょうか?

答えな簡単だそうです。平均的なプログラマーとすばらしいプログラマーの差を考えてみましょう。
その差は二倍や、三倍や百倍どころではなく、なんと千倍だそうです。
この千倍の開きは、弁護士にも外科医にもデザイナーにも、研究者にも販売委員にも当てはまるそうです。

ほかにも、予想外のことばかりで「人生は計画できないもの」ですが、ただ一か所「能力の輪」の中では、必要なだけ先を見通し、その後に起こる事態を予測することができるそうです。

結論として、「自分に不足している能力」に不満を感じるのはやめましょう
少なくとも「一つの分野」で抜きんでていればいいのです。
一つでも素晴らしい能力があれば、欠点がいくつあろうと帳消しになるのです。
同じ時間を費やすなら、「能力の輪」の内側のことに費やすほうが千倍の価値があるのです。


17.静かな生活を大事にしよう―冒険好きな人より、退屈な人のほうが成功する

・「証券トレーダーたち」と「バフェット」の対比

証券会社のトレーディングルームで、男性ホルモンをみなぎらせ必死にトレードをしている腕まくりをした証券トレーダーたち
どこにでもあるオフィスビルの14階にある飾り気のないオフィスでで静かに働く白髪のウォーレンおじさん。

両者の違いが理解できれば、人生に役立つそうです。


・「投資家」だけが大きな成功を手にできる理由

両者の違いはまず、「投機家」と「投資家」という違いになります。
証券トレーダーたちは、活発に有価証券を売買して利益を生み出そうとします。
バフェットたちは、少数の企業の有価証券だけを買って、売買をできるだけ行わず、長く保有します。

両者の最も大きな違いは、「費やす時間の長さ」です
そもそも、私たちの脳は、「短時間に一気に状況が変わるような展開」を好むようにできているそうです。
何かがピークに達したりどん底に落ち込んだ時、急激な変化や世の中が騒然とするようなニュースには、大げさに反応し、ゆったりした展開にはほとんど気づかないのです。

そのため、私たちは、「何もしない」よりは「している」ほうを、「思案する」よりは「せっせと働く」ほうを、「ただ待つ」よりは「積極的に動く」ことのほうを、高く評価してしまうのだそうです。


・なぜ「カローラ」が最も売れた車となりえたのか

これまで一番売れている本は、(何十年もしくは何百年出版され続けている)聖書や毛沢東の「毛主席語録」、サン=テグジュペリの「星の王子様」などなど、いわゆるロングセラー本だそうです。
カローラは、世界で一番売れている車ですが、発売一年目の売り上げで人気車になったわけでなく、長期にわたって売れ続けているからこそ、人気車の座を獲得できたのです。

こうした長期にわたる成功のもう一つの例として、利回り5パーセントの商品を挙げることができます。
この商品に120万円を投資したとしたら、一年目の利益は6万円と大きな額ではないですが、10年後には、120万円は200万円になり、50年後には1400万円になります。
これが、「長い時間をかけて一貫して何かに取り組んだほうが、大きな成功が得られる」という理由です。
資本は、一定の割合ではなく、飛躍的に増えるのです。
しかし我々は、長期にわたって起こる飛躍的な変化を感じとることができないのです。
緩慢で退屈そうに見えて、時間がかかるプロセスが最も大きな成果を生み出しますが、同じことは人生にも言えます。


・一つのことに「長期的」に取り組もう

現在、「積極性」や「多忙さ」や「せわしなさ」が、かつてないほど褒めはやされているそうで、人生まで完全に破壊して、新たに創りあげるようせきたてられているかのようです。

そのうえ多くの人は、人生には、冒険や旅行や、さらには絶頂期がつきものだと思い込んでいます。
しかし著者は、人生は、静かなほうが生産性が高い、と言います。

バート・ラッセルが次のように書いているそうです。
ほんの少しの華々しい時期を除けば、偉人たちの人生はとても刺激的と言えるようなものではない

ソクラテスも、カントも、ダーウィンも、えてして静かな生活を送っているもので、大した楽しみもない人生のように見えたかもしれないそうです。
派手に動き回れば、積極的に動き回れば、結果がともなう、という相関は存在しないそうです。

だから人生を向上させるためには、
せわしなく動き回るのを控え、何ごとにも落ち着いて、長期的に取り組むことが大事です。

いったん「能力の輪」をつくりあげたら、また同様によい人生のパートナーや理想的な住まいや充実感を得られる趣味を見つけた場合も、根気、長期的な考え、一つのことに取り組み続けることが、非常に価値のあることだそうです。
それらは今、過小評価されている美徳なのです。


つづく…。


Think clearly:⑭⑮

ひきつづき、ロルフ・ドベリ著『Think clearly』を紹介します。


14.買い物は控えめにしよう―「モノ」より「経験」にお金を使ったほうがいい理由


・車を「所有」する喜びと、車を「運転」する喜び
あなたは、車や家、パソコン、などなどを持っていることにより
どれくらい「喜び」を感じているでしょうか?


心理学者のカーネマンと徐は、車を所有している人たちに、この質問をし、持っている車の価格と答えを比較する共同研究を行ったそうです。
結果は、「車が高級であるほど、所有者の喜びも大きい」というものでした。
妥当な結果でしょう。

次に少し違う質問をします。
前回、その車を運転したとき、運転中にあなたはどれぐらい喜びを感じていたでしょうか?

この質問に対しては、車の価格と答えに、まったく相関が認められなかったそうです。
高級車でも使い古しの車でも、喜びを感じる度合いは共通して低く、最低レベルにとどまったそうです。


・モノの喜びはどんどん小さくなってしまう

この差はどこから生まれるのでしょう?

理由は簡単だそうです。
最初の質問では、私たちは「車そのもののこと」を考えますが、二番目の
質問では、「車以外のいろいろなこと」が頭に浮かんでくるからだ
そうです。

前回見た「フォーカシング・イリュージョン」の影響です。
これは車だけでなく、「お金を出して手に入れたものに感じる喜び」に常に作用するそうです。

一つのものに集中していると、その影響を極端に過大評価しがちで、また何かを買って間もないうちはそれについてばかり考え、モノに大きな喜びを感じるのです。けれども、日常生活で使っているうちに、そのモノの存在は思考の海の奥底に沈んでしまい、喜びはだんだん小さくなっていきます。

ぜいたくな買い物をしたときはさらに、それを維持するための手間ひまやお金という「反生産性」というべき隠れた副作用があります。

この両方の要素を考慮に入れると、
大きな買い物をした場合の実質的な満足度は、結果的にマイナスになってしまうそうです。
例があるそうです。


・郊外の邸宅を手に入れたら、どれくらいうれしいか?

郊外に邸宅を手に入れたら、最初の三か月間、部屋一つ一つを楽しみますが、半年もたつと、その素晴らしさも慣れてしまいます。また以前のように雑事に飲み込まれ、急を要することへの対処に追われるようになります。

今の邸宅では、清掃してくれる人や庭師が必要で、買い物は歩いていけないし、以前は自転車で20分だった通勤時間は今や往復2時間。つまり、すばらしい邸宅を購入してから、実質的な満足度には損失が出ています。

ヨットを持っていた友人は、著者にこう言ったそうです。
ヨットを所有していて一番うれしかったのは、買った日と手放した日だった」。
モノを買うときは控えめにしたほうがいいみたいですね。


・「モノ」の喜びは消えるが、「経験」の喜びは残る

ところが、フォーカシング・イリュージョンの作用を受けない「高級品」も存在するそうです。
それは「経験」だそうです
すばらしい何かを経験すると、その喜びは、頭の中にも心の中にもとどまり続けるのです。

「モノ」を買うよりも、何かを「経験」することに投資したほうが、良いのです。
良い本を読むことや家族とのお出かけ、友人とのカードゲームなど、たいていのことはコストがかからず経験できるし、「反生産性」も生まれません。
大金を払わなければ経験できな世界旅行などもありますが、ポルシェのコレクションを持つよりはずっと質の良い投資だそうです。

著者は、「仕事も経験の一つ」だということを覚えておいたほうがいいと言います。
仕事中は仕事の存在をしとりたてて意識することはないのですが、その間、多大な労力を注ぎこまなければならないため、頭は仕事のことでいっぱいになります。
好きな仕事をしているのなら、こんなに素晴らしい経験はないでしょうが、反対に嫌いな仕事をしているなら、問題は深刻です。

著者は、それまでの仕事が嫌いだからでなく、物を書くのが好きだから物書きになったのだそうです。
「書いた結果として出版される本」よりも「書くという行為」のほうが大事だそうです。
本が出版された時はうれしいそうですが、しばらくするとその本のことは考えなくなるそうです。

たとえ大金を稼げても、喜びをもたらさない仕事に就くのばかげている、と著者は言いいます。


・一緒にいて喜びを感じる人を「結婚相手」にする

「結婚生活」においても大事なのはやはり、その生活を通してよい経験が得られるかどうかだそうです。

「モノ」がくれる幸せを過大評価し、「経験」がくれる幸せを過小評価してはなりません。

けれども、高いものをすでに買ってしまっている人に対して、著者は次のようなアドバイスをくれます。
意識的にそのモノで喜びを感じる機会(経験)を持つこと

目からうろこですねー。


15.貯蓄をしよう―経済的な自立を維持する


・砂漠の中で「一リットルの水」にいくら払うか?

砂漠で二日前に最後の一滴の水を飲み干してしまったとして、誰かが一リットルの水を売ってくれるとしたら、あなたはいくら払うでしょうか?

全財産でも払うかもしれません。
次の一リットルにはいくら払うでしょうか?
さらに次の一杯には?

徐々に、支払額は減るでしょう。
これは、経済学者が言う「限界効用逓減の法則」と呼ぶ現象です。
消費する水が増えるごとに水によって得られる満足感が小さくなっていき、
一定量を過ぎると満足感は全く得られなくなってしまう
のです。

この法則は、水、衣服、テレビのチャンネルなどほぼすべてのものに適用できますが、中でもこの法則が当てはまるのは「お金」に関してだそうです。


・「年収がいくらあれば幸せなのか」を考える
以上のことを踏まえたうえで、「お金は、果たして人を幸せにするのだろうか?」を考えてみましょう。

まずは、次の質問。
年収がいくらあれば、追加収入があっても幸福度は変わらないだろうか?

困窮している人にとってはお金はそれなりに重要ですよね。
調査研究によると、世帯年収が10万ユーロ(約1200万円)
を超えると、追加収入が幸福度に与える影響はゼロになる
そうです(多少の前後はあり)。

筆者にはやや疑問ですが、著者いわく、よく考えれば意外でも何でもないそうです。
億万長者でも、歯を磨かなくてはならないし、眠れないことや気がふさぐことはあり、家族のごたごたもあり、年を取ることや死ぬことが怖いはずだから。

そのうえ億万長者は、億万長者ならではの厄介ごとがあります。
お付きの人を引き連れたり、マスコミに追われたり、お金を無心にやってくる人をさばいたり。


・「宝くじの高額当選者たち」は本当に幸せか?
1978年に、「宝くじの高額当選者たち」の幸福度を調べた調査が行われたそうです。
その結果は、「高額当選を果たした数か月後には、当選者たちの幸福度は、
すでにそれ以前とあまり変わらなくなっていた」ことがわかった
そうです。

経済学者のリチャード・イースターリンは、「1946年のアメリカ人の幸福度」を「1970年の幸福度」と比較する研究を行いました。
生活水準は50%近くアップしていたのにもかかわらず(ほぼすべての家庭に車と冷蔵庫と洗濯機があり、蛇口からお湯も出るようになっていた)、幸福度はほとんど差がなかったそうです。
アメリカ以外の18か国でもすべて同じ結果だったそうです。

基本的な需要が満たされてさえいれば、生活がより豊かになっても幸福度は変わらない
、のです。

なのに私たちはなぜ収入を増やそうと躍起になっているのでしょう?
答えは、豊かさとは、「絶対的な価値」ではなく、「相対的な価値」だからだそうです。


・「お金がもたらす幸福度」は何によって決まるのか

あなたと同僚がそれぞれ大口の契約をまとめたので、ボーナスが支払われるとします。
その際、次のどちらを選びますか?
(a)あなた一人が1万ユーロ(約120万円)を受け取る
(b)あなたが1万5000ユーロ(約180万円)、同僚が2万ユーロ(約250万円)受けとる

大多数の人は。(b)のほうが額が多いにもかかわらず、(a)を選ぶそうです。

同じような想定質問です。
あなたが十分な広さの家を建てたとします。
一年後となりに、誰かがあなたの家よりはるかに立派な邸宅を建てたらどう感じるでしょうか?

お金の相対的な価値が決まるのは、「他者」との比較によってだけではなく、
「あなたの過去」によっても変化します


社会人人生の前半より収入が5万ユーロから10万ユーロに増加した人は、10万ユーロから6万ユーロに減少した人よりも幸福度が高いそうです。減った人は増えた人よりも年収の合計額を大きいにもかかわらずです。

要は、貧困ラインを上回る所得のある人々にとって、「お金がもたらす幸福度」は本人の解釈次第でどうにでもなるということです。お金があなたを幸せにするかどうかは、あなた自身で決められるのです


つづく…。


Think clearly:⑫⑬

ひきつづき、ロルフ・ドベリ著『Think clearly』を紹介します。


12.本音を出しすぎないようにしようーあなたにも「外交官」が必要なわけ

・本音は「どの程度」オープンにすべきか?

「オープンな人」はわかりやすく、嫌いという人はあまりいないでしょう。
セミナーでもリーダーシップについて書かれた本でも、「オープンな人付き合い」は必ずと言っていいほどテーマになるそうです。

しかし、自分の本音を「どの程度まで」オープンにすべきでしょうか?

自分の本音を全く隠そうとしない人を具体的に思い描いてみると、驚くほど礼儀知らずで、あからさまに口の悪い、自分勝手な人を想像できるかもしれませんね。


・周囲に不快感を与えない「気遣い」が前提
自分の本音をオープンにしすぎるのも考えもので、どんな場合でも、周囲に不快感を与えないための気遣い、つまり一定の礼儀やマナー、自制心はあってしかるべきです。

ネットの世界では、本音を吐露しない人は閉鎖的に扱われるそうですが、実際には、本音と言いながらも公開されているものはパフォーマンスに過ぎないそうです。


・本音をさらけ出さないほうがいい理由

本音をあけすけに語ることをあまり重視しすぎるのをやめたほうが良い理由
まず、私たち自身、自分のことを本当にわかっているとは言えません
本音を語っていい相手は、あなたをよく知るパートナーやごく身近な友人たちで、表面的な付き合いしかない人の前や、ましてや公共の場で、本音をさらけ出すなどもってのほかだそうです。

二つ目の理由は、本音をあけすけに語っても、自分を滑稽に見せるだけだからです。
自分の心の内を語っても尊敬は得られません。口にした約束を果たすから尊敬は得られるのです。

三つ目の理由は、外側との境界のない生物は長くは生きられないからです。生命の基本単位の細胞には膜があり、それが有害な物質の侵入を防いぎ、通過させる分子を選別しています。人間が本音をさらけ出すことは心理レベルでの膜やバリアのようなものをもたずに、周りの人に「都合のいいよう利用して」と言っているようなものです。周りから攻撃されやすくしているだけです。


・意識的に「二番目の人格」をつくりあげる

第二次世界大戦の英雄で、のちにアメリカの大統領になったアイゼンハワーは、
意識的に『外に向けた人格』をつくりあげていた」そうです。

この「二番目の人格」は、作為的に作り上げた虚像というわけではなく
安定した信頼を勝ち得るための、「職業上の外向きの顔」なのです。

この人格には、迷いや挫折感や失望感とは切り離されていいます。
このような「二番目の人格」を作り出すことを著者は勧めています。
そのためには、本音を出しすぎず、約束したことを守り、あなた自身の信条に従った行動をとれば十分だそうです。

もしこれに違和感を持つなら、自分自身を一つの国だと考えて、外交方針を具体的に書いてみて、自分自身が自分の「外交官」を務めるのです。外交官には、胸の内をさらすことも、弱みを見せることも求められていません。大げさに嘆くことも望まれていません。

期待されるのは、約束を実行すること、協定を守ること、大臣にふさわしい態度をとること、陰口をたたかず、不平を言わず、少なくともある程度の礼儀をわきまえることです。

「二番目の自分」であれ、「外務大臣」であれ、それが果たすバリアの役割は、外部からの有害なものから守ってくれるだけでなく、自身の内面を安定させてくれます。
区切りが明確になれば、「内側の世界」のこともはっきりと理解できるようになるそうです。

他人に自分をさらけ出せと言われても、その言葉に乗ってまいけません。


13.ものごとを全体的にとらえよう―特定の要素だけを過大評価しない


・マイアミビーチに住んだら「幸福度」はアップする?

ちょっと想像してみましょう。
あなたは、ドイツに住んでいます。季節は、今冬で、出勤するところ。車に乗り込み、排気ガスで汚れた雪が残っていて、冷たい風を顔に受けながら、フロントガラスの氷をそぎ落としています。靴はドロドロで、指はかじかんでいて痛みます。そしてシートもハンドルも冷たい車に乗って、職場に向かいます。

ここで質問。もしあなたが。太陽がさんさんと降り注ぎ穏やかな海風が吹く気温26度のマイアミビーチに住んでいたとしたら、あなたの幸福度はどれくらいアップしますか
0(全く変わらない)から10(果てしなくアップする)まで点数をつけましょう。
(ほとんどの人は、4から6の点数をつけるそうです。)

さらに続いて、あなたは今駐車場から職場に向けて出発し、渋滞に巻き込まれ、30分遅れで到着します。職場には、大量のメールと上司のいつものごたごたが待ち構えています。仕事のあと、一週間分の食事を買って家で料理をし、のんびり食事をして、映画を見て眠りにつきます。
これはマイアミでも同じです。

ここでもう一度同じ質問を。マイアミに住んでいたら幸福度は?
ほとんどの人は、0から2の間で点数をつけるそうです。


・「フォーカシング・イリュージョン」に惑わされない

著者は、マイアミビーチに10年住んだことがあり、その前後は雪やぬかるみと縁の切れないスイスに住んでいます。そんな著者いわく、両方の生活での幸福度の違いは「ゼロ」だそうです。

ノーベル経済学賞を受賞した心理学者のダニエル・カーネマンが「フォーカシング・イリュージョン」という言葉で、このことを次のように説明しているそうです。
フォーカシング・イリュージョンとは
特定のことについて集中して考えている間はそれが人生の重要な要素の
ように思えても、実際にはあなたが思うほど重要なことでも何でもない

という錯覚を表す言葉です。

つまり、人生における「特定の要素」だけに意識を集中させると、
その要素が人生に与える影響を大きく見積もりすぎてしまう
のです。

先ほどの質問では、寒いドイツと温暖なマイアミビーチという「気候」についてだけ焦点が当てられています。すると、この一つの要素だけが、ドイツとマイアミの生活満足度を評価する基準になってしまうのです。

その後の一日の流れを追うことで、「天気はその日の全体のほんの一部の要素にすぎない」ことがわかってきます。それからの一週間、一か月、一年、一生、と考えれば、天候は人生の満足度においてほとんどとるに足らないことになってきます。

特定の要素だけに意識を集中させないほうがいいのです。


・冷蔵庫にビールがなくても私たちは泣き叫ばない

たとえば、車を購入するときや就職先を選ぶ時、夏休みをどう過ごすのか決めるとき、などなど、「何かを比較して、選択しなければならない」状況では、我々は「たった一つの要素」だけに注目し、他の要素をなおざりにしがちだそうです。

その要素が、決めるときの重要なポイントだと必要以上に思い込んでしまうのです。
これがまさに、フォーカシング・イリュージョンの影響です。

では、そうならないためには、どうすればいいのでしょうか?

無数にある要素をすべて比較してもいいのですが、効率は良くありません。
実用的な方法は、「比較しようとする二つのものを、それぞれ大きなまとまりとして認識する」方法です。
特定の要素だけを過大評価しないよう、十分な距離を置いて比べてみるのです。

言うは易し行うは難しだそうで、著者は、ここで「距離を置いたものの見方」のイメージをつかむための例をあげくれています。
幼い子供は、おもちゃを取り上げると、この世の終わりのように泣き叫びますが、大人は、冷蔵庫にビールがないからと言って、泣き叫びません。
とはいっても、目の前の状況を大きく距離を置いて全体的にとらえることはなかなかできませんね。


・「広角レンズ」を通して、自分の人生を眺める

もし他の仕事を選んでいたら、別の場所に住んでいたら…「自分の人生どのくらい良くなっていただろうか」と考えたことがありますよね。
著者いわく、少しは違ったかもしれないが、何か一つの要素が変わったぐらいではその結果は思っているよりも小さいそうです。

自分の人生を、できるだけ距離を置いてとらえてみましょう
今は重要に思えているものが、全体図ではほとんど影響を与えないほどの小さな点になっていくのがわかるでしょう。
良い人生を手に入れたければ、時には「広角レンズ」を通して、その全体を眺めてみることだそうです。

著者は、パリのホテルでエッフェル塔の見える部屋を用意できなかったことに対して、ある男性がフロント係の女性を英語で「あんたのせいでこのパリ旅行は台無しだ!」と怒鳴りつけているのを目撃したことがあるそうです。
それはパリ旅行を楽しむという全体図の中で些細な要素に過ぎません。エッフェル塔はパリの到るところからも見えます。

このアメリカ人は、アリのような小さなことを象のように大きくしてしまった、と著者は言ってます。


・あなたが億万長者なら、どんな生活を送るだろう?
あるいは、どれほど幸福度がアップするでしょうか?

フォーカシング・イリュージョンの影響を受けやすいのはなんといっても「お金」に関してだそうです。

ウォーレン・バフェットの暮らしは、一般市民の暮らしと何ら変わりがないそうです。
人生の三分の一をマットレスの上で寝て過ごし、我々と変わらない値段の洋服を買っているそうです。
好きな飲み物は、コカ・コーラで、学生が食べているよりも高級なものや健康的なものを食べていないそうです。普通の机といすを使って仕事をしているし、オフィスは1962年からずっと同じで、どこにでもあるオフィスビルの中にあるそうです。

彼が裕福であることは日々の暮らしにはほとんど影響を与えていないのがよくわかります

唯一の違いは、我々は飛行機を乗るときエコノミークラスを利用しますが、彼はプライベートジェットを持っていることです。
人生のたかが、「0.1パーセント」を過ごす間だけに違いがあるのです。


つづく…


Think clearly:⑩⑪

ひきつづき、ロルフ・ドベリ著『Think clearly』を紹介します。


10.謙虚さを心がけよう―あなたの成功は自ら手に入れたものではない


・バフェットが「卵巣の宝くじ」と呼ぶものとは?

「運は生まれつきのものだが、成功は努力して手に入れるものだ」と一般的にいわれていることは、あなたの人生にも当てはまるのか、人生を振り返ってみましょう。

まずは「人生の成功度」に点数を付けます:+10点(スーパースター並み)から-10点(完全な失敗)の間で。

次に、手に入れた成功のうち、努力し、働いて手に入れた個人的な成果の占める割合と、あなたがかかわれない要因や偶然がもたらした成果が占める割合の配分を考え、それも書き留めます。
努力して手に入れた成果(  )パーセント
偶然がもたらした成果(  )パーセント

著者の周りでは、個人的成果が60%前後、偶然による成果が40%前後という答えが最も多かったそうです。

さらに、ウォーレン・バフェットの言葉を借りて、思考実験をしてみましょう。
母親のおなかの中にいる一卵性の双子を思い浮かべ、二人の生命力も知力も全く同じであると考え、そこに妖精がやってきて、こう言ったとします。

あなたたちのうちどちらか一人はアメリカで、もう一人はバングラディシュで育つ
ことになります。でもバングラディシュで育つ人には、税金の支払いは免除しましょう


アメリカで生まれた子が、生まれた場所のおかげで獲得できる収入……将来的な収入のうち
(  )パーセント

バフェットは、生まれたときに運命づけられているこうした格差のことを、「卵巣の宝くじ」と呼んでいるそうです。著者が質問すると、(著者自身も含め)ほとんどの人は80%前後と答えたそうです。
生まれた場所は、社会的成功の大きな要因なのではないでしょうか


・すでにあなたは、途方もない幸運に恵まれている

著者は言います。
現在のあなたに有利にも不利にも働くあなた自身の価値観も、
モノの見方も、思想も、あなたが自分で身につけたものではない


気がつけば入っていた「学校」で出会った先生も、自分で選んでいません。
悲劇的な出来事が起きたのも起きなかったのも、自分で選んでいません。
「自分で選んできたものがある」というかもしれませんが、そのきっかけは?
人生を変えてしまうような本や人だっかもしれません。
それらと出会ったもは、誰かのおかげではないのでしょうか?

たとえあなたが今、自分の人生に不満があっても、客観的に見れば「途方もなく幸運に恵まれています」。
現代に生きている人間は、これまで地球上に存在した
全人類のうち「ほんの6パーセント」に過ぎないのです

ホモサピエンスが世界に誕生して以降、過去30万年の間に生まれたすべての人間の中で、今の時代を生きているのはそのうちたった6パーセントなのです。これはつまり、他の時代に生まれた可能性が「94パーセント」もあったということです。


・「偶発的な遺伝子の掛け合わせ」で生まれてきた

著者には二卵性の双子の息子がいるそうです。
40秒違いで生まれた二人は見た目も同じではなく、性格や器用さもまるで違うそうです。
夫婦の遺伝子が掛け合わさって、新しい人間が作り出されたのです。

太陽王ルイ14世の時代(日本では徳川家康の時代)にまでさかのぼると、あなたの祖先の人数は、4千人にまで増えるそうです。今のあなたはその4千人の遺伝子の偶然的な掛け合わせの結果なのです。

あなたの強い意志の力があなたの社会的成功を生み出したとしても、その強い意志の力は、
偶発的な遺伝子の掛け合わせと環境によって作り上げられたものなのです


・すべては、目に見えない偶然の結果である
ここで最初の質問に戻って、あなたの成功のうち、あなたの個人的な成果が占める割合について考えてみると、正しくは「ゼロパーセント」です。
あなたの成功は、本当の意味であなた自身が手に入れたものではないのです。

このことから二つの結論を導き出せます。
一つ目は、謙虚であれということ。
社会的成功を収めている場合は、特に謙虚にならなければなりません。しかも心の底から。
おごりを持たない姿勢は、良い人生を送るための基本中の基本だそうです。
大事なのは幸運に対する「感謝」の念であり、それは副次的な効果ももたらしてくれるそうです。
感謝の気持ちは人を幸せにしてくれるそうです

二つ目は、成功の一部を惜しみなく分け与えるべきだということ。
自分を高潔な人間に見せるためではなく、それが人間としての良識ある行動であるからであり、それはモラルの問題だからだそうです。


11.自分の感情に従うのはやめよう―自分の気持ちから距離を置く方法


・「見ているもの」と「感じていること」の違い
まずは、質問。「いま、あなたが見ているのはなんだろう?
あなたの視界に入っているものを、できるだけ具体的に書いてみましょう。一分間ほどで。

次の質問。「いま、あなたはどう感じているだろう?
今のあなたの中にある感情をできるだけ具体的に書いてましょう。一分間ほどで。

最初の質問の答えは、すらすらと書けたのではないでしょうか。
二つ目の質問への答えは、かなりあいまいな描写が並んでいるのではないでしょうか。
自分の感情の理由は何でしょうか。

・「感情の言葉」は「色の言葉」よりも圧倒的に多い

ドイツ語には「感情を表す形容詞」が、およそ150種類あるそうです。
英語になるとその倍くらいあるそうです。

これは色を言い表す言葉よりも多いことになりますが、我々は自分の感情をきちんと言い表すことができません。
それでも、世の中は常に、「あなたの感じた通りに!」「心の声に従って!」などなどの言葉であふれています。こうした言葉には従わなくていいそうです。

自分の「感情」を人生のナビゲーションとして使わないほうがいいのです。
それは絶えず不安定にぐるぐる回り続けているからです。


・あなたの「過去の出来事そのもの」に注目する

心理学には、「自己内観における錯覚」という言葉があるそうです。
自分の思考を省みることで、自分自身を徹底的に究明できるという「思い込み」を表す言葉だそうです。

しかし著者は言います。
自分の「感情」を分析してみても、良い人生にはつながらない、と。
自分の感情に入り込めば、最後には気分と感情と思考の断片が集まって混沌としている泥沼の中だそうです。

面接に関するある研究結果によると、30分ほどの面接は実はあまり意味がなく、面接者のそれまでの実績を子細に検討したほうがよっぽど役に立つらしいです。

自分の感情を分析するのは自分で自分の就職面接をするようなもので、全く当てにならないそうです。
感情の代わりに分析すべきは、自分の「過去」だそうです。

あなたの人生で繰り返し起こることは何でしょか?
出来事が起きた経緯を後付けで解釈するのではなく、おきた出来事
そのものに注目して分析すれば、自分を知る手掛かりになる
そうです。


・自分の感情なんて、全く当てにならないもの

自分の感情を分析するのが厄介な理由は二つあるそうです。
一つ目は、どれだけ分析してもそれを遺伝子にコピーして次の世代に伝えることはできないからだそうです。
人間は「自分の感情より他人の感情を読むほうが得意」です。
だから自分の感情を正確に把握したいと思えば、友人やパートナーに聞いてみるほうが良いのです。

二つ目は、あなた以外にあなたの心の決定権を持つ人がいないからだそうです。
自分の感情をどう判断しようが、それに異を唱える人は誰もいません。
だから、修正機能が働かないために、的確な分析などできないのです。
そうならば、自分の感情、特にネガティブな感情は重く受け止めなくていいのです。

著者は、人間は自分の感情にもっと疑いを持ち、感情から距離を置き、
遊び心のある新しい関係を自分の心と築くべきではないか
、と思うそうです。


・「感情」は、飛んできては去っていく鳥のようなもの

著者は、自分の感情をどこからともなく自分のところにやってきてはまたどこかへ飛んでいく、鳥のようなもので、自分とは関係のない何かのように扱うようにしているそうです。

自分のことを感情というありとあらゆる鳥が飛んで来ては去っていく、屋外市場のようなものと表現しています。
こういうイメージをつくリあげてからは、
「自分の感情」が自分の一部とは感じられなくなったそうです。

歓迎できない鳥も来ますが、気にならないそうです。
また、感情の鳥を鳥の種類になぞらえてみれば、遊び心をもって感情とつきあえるそうです。
「やっかみ」はちゅんちゅん鳴くスズメ、「怒り」は猛スピードで飛ぶハヤブサ、などなど。


・「ネガティブな感情」は自分の意志では取り除けない
遊び心をもって、ネガティブな感情との「リラックスした付き合い方」を見つければ、ある程度落ちつきを手に入れることができるそうです。
ただし、遊び心だけでは処理できない、「自己憐憫」「苦悩」「嫉妬」などなどのとても毒性が強い感情もあるそうです。

対処法は、基本的に自分の感情は信用しないほうがいい、だそうです。
「周りの人の感情」」は常に真剣に受け止めるべきだが、
「自分の感情」とは真面目に向き合う必要はない
、そうです。



つづく…


Think clearly:⑧⑨

ひきつづき、ロルフ・ドベリ著『Think clearly』を紹介します。


8.必要なテクノロジー以外は持たないーそれは時間の短縮か?浪費か?


・あなたの車の「平均速度」から見えてくるもの
車の平均速度はどのくらいでしょうか?
今や車載コンピュータが平均速度を計算してくれますが、それは、「年間走行距離」を「年間に走行する時間」で割ったものです。およそ「時速50キロ」くらいでしょうか。

しかしこの計算は正確ではありません
正確には、車の購入費を稼ぐために必要な労働時間(a)とか、車の保険料や維持費とか、ガソリン代とか、交通違反の罰金を払うために必要な労働時間(b)も考慮に入れ、さらに交通渋滞時間(c)も合計し、走行時間に加える必要があります。

70年代に、アメリカの社会評論家イヴァン・イリイチがアメリカにおける様々な車の平均速度をこの方法で計算したそうです。

あるアメリカ車の平均速度は「六キロ」程度だったそうです。
これは歩く速度とほぼ同じです。

今は人口も40%増えてますので、平均速度はこれを下回るのは確実でしょう。
イリイチは、この現象を「反生産性」と名付けたそうです。

この言葉は、
テクノロジーの多くは、一見それによって時間とお金を節約できているように見え
ても、実際にかかったコストを計算してみたとたんに、その節約分など消えてしまう

という事実を表しています。


・それは「本当に便利なのか」を厳密に考える

Eメールはどうでしょうか?
大変便利ですが、迷惑メールの排除や必要かどうかわからないメールへの対応、パソコンやスマートフォンの購入費の一部、ソフトのアップデートにかかる時間、などを勘案すれば、本当に必要なメール一通あたりのコストは、1ユーロで従来の手紙の郵送料と同じくらいだそうです。

プレゼンテーションにも同じことがいえるそうです。
登場前は、手書きと話をするだけで済んでいました。
パワーポイントの登場以来、一回のプレゼンテーションの準備に多くの人が時間をかけ、余計な仕掛けまで付け加えたりしています。
それだけでなく、ソフトウェアの使い方を習得するために無駄な時間とアップグレードにかかる時間、ファイルの仕上げや改良、などの反生産的コストもかかります。


・「反生産性」の視点で、生活を検討し直す
このような「反生産性」について驚かされますが、生物学者にとっては以外なことでもないそうです。

例えばクジャク
羽がきらびやかであればあるほど雌の注意を引きやすいですが、
同時に捕食者に見つかる可能性が格段に高くなるそうです。
これは、シカの雄の立派な角やスズメ類の雄の美しいさえずりにも当てはまるそうです。

著者は最低限のテクノロジー以外は排除しているそうです。
家の中の電化製品をインターネットで統合し管理するスマートホームなどは、ハッキングという新たな「反生産性」を生むものだ、と考えているそうです。


・「本当に必要なもの」以外は、思い切って排除する
デジタルカメラはどうでしょう?
フィルムがいらない、現像もいらない、映りの悪い写真ともおさらばできる、何枚でも撮り直しができる…などなどいいとこだらけですね。

しかし、今では多くの人が不要な写真やビデオを抱え、それらを整理する時間もないままバックアップしクラウドに保存し、誰かが悪用しやすくするかのように、あちこちに持ち歩いています。

良い人生の基本的なルールは、本当は必要ないものを排除すること、だそうです。
特に新たなテクノロジーは、手に入れる際によく考える必要があるそうです。


9.幸せを台無しにするような要因を取り除こうー問題を避けて手に入れる豊かさ

・飛行機の操縦をするときに注意を払うことは?
著者は、単発エンジン飛行機(1975年製造)を所有し、操縦するそうですが、心がけているのは、墜落を避けることだけで、そのために、悪天候や予備燃料不足、チェックリストの確認、過度の疲労で操縦しないこと、などに気を付けているそうです。

人は、飛行機を操縦する際に、このような心がけは当たり前だと思うかもしれませんが、
これが「投資」に関してとなると、そうは考えないかもしれません。

投資には、「アップサイド(ポジティブな投資結果)」と「ダウンサイド(ネガティブな投資結果)」とい言葉があるそうです。飛行機の操縦に当てはめると、著者は、「ダウンサイド」に過剰なほど気を配るそうです。

ダウンサイドが取り除かれてさえいれば、アップサイドは自然に姿を現すものだからです。


・「勝つこと」ではなく「負けないこと」が大事

著者いわく、飛行機の操縦、投資、テニスなどでも、同じことがいえるそうです。
「ミスを避けること」だけに気持ちを集中させればいいのだそうです。
「ダウンサイド」に意識を集中させるアプローチです。


・「否定神学」が私たちに教えてくれること

中世の思想家はこのアプローチに「否定神学」と名づけています。
神でないものを特定し、除外していくことで神を語ろうとする「否定の論理」です。

「神が何であるか」を言い表すことはできないが、「神が何でないか」は明確にできる

というものです。

同書でいうところでは、
何がよい人生を保証するかは言い表すことはできないが、
よい人生を妨げるものなら特定できるということ
、だそうです。

著者は、「何が人を幸せにするのか」の具体的要因は曖昧極まりないが、「幸せを大きく損なうものは何か」の具体的要因は挙げることができるそうです。


・「人生のマイナス要素」をはじめから避ける

だから、良い人生を手にしたければ、「人生のダウンサイド」を計画的に排除すればよいのだそうです。
もちろん「不運」というものが降りかかる恐れはありますが、それはそもそもコントロールできません

「病気」「身体的障害」「離婚」というマイナス要素から
受けたショックは、思っているほど長続きしない
そうです。

これらは次第に、日常の雑事に追いやられていくそうです。それに対して、アルコール
依存や麻薬、慢性的なストレス、騒音、長い通勤時間などは慣れることがないそうです。


・「何を手に入れたか」ではなく「何を避けるか」
ダウンサイドを避けるのが何よりも重要だということは、著名な投資家が教えてくれるところでもあります。

バフェットは次のように言っているそうです。
私たちは、ビジネスにおける難問の解決法を見つけたわけではない。
難問は避けたほうがいいと気づいただけだ


問題を避けるのに、特別な賢さが必要なわけではないようです。

マンガーは、自分たちの成功について、次のように言っています。
…私たちは、ただ賢くあろうとする代わりに、愚か者になるのを避けているだけなのだ

馬鹿げたことや愚かなことを避け、時代の風潮に流されなければ、人生はおのずとうまく行く、
のだそうです。

マンガーはユーモアたっぷりにこうも付け加えています。
「一番知りたいのは私が死ぬ場所だ。そうすれば、その場所を常に避けていられるからね」


つづく…


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